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不思議な土器(豊穣への祈り):多量種実混入土器・多量コクゾウムシ混入土器

不思議な土器(豊穣への祈り):多量種実混入土器・多量コクゾウムシ混入土器

不思議な土器(豊穣への祈り):多量種実混入土器・多量コクゾウムシ混入土器

圧痕法による調査の進展に伴い、明らかになってきた新たな事実として、エゴマの果実やダイズやアズキの種子などを多量に練り込んだ土器が東日本の縄文時代遺跡から多数発見されることである。これらの土器には、数百個規模の種実が粘土中に練り込まれた痕跡がある。これらの種実には、土器を壊れにくくする効果はなく、むしろ土器の棄損につながる可能性がある。さらには、種実が混入していても、外部からは見えず、装飾的な効果も期待できない。多量に粘土中に入る種実は、栽培植物や人がよく利用する植物など、人間に近い種に限られるという特徴がある。これは種実を土器粘土に入れる行為そのものを意図した結果であって、作物の豊穣を願い、土器を大地に見立ててタネをまく、播種の疑似行為(儀礼)と考えられる。

北海道南部にある館崎遺跡では、縄文時代後期初めの土器から500匹以上のコクゾウムシ成虫を練り込んだと思われる土器が検出された。クリを加害したと思われるこれら害虫を練り込んだ意図については、コクゾウムシをクリの化身にみたて、クリの豊穣を願って混入したのではないかと考えている。このような土器は世界的にみてもほとんど確認されておらず、縄文人たちの思考や自然物に対する思いを想像できる貴重な遺物である。

富山市小竹貝塚:エゴマ多量混入土器(3D画像)(6,000年前)

千歳市キウス3遺跡:アサ多量混入土器(3D画像)(2,000年前)

上段:船橋市取掛西貝塚:多種混入土器(土器種実混入の開始期)(8,000年前)
下段:西東京市下野谷遺跡:エゴマ・ダイズ多量混入土器(5,000年前)

北海道館崎遺跡:コクゾウムシ入り土器「コクゾウムシを探して見よう!」

北海道館崎遺跡から出土したコクゾウムシ入り土器(Video)

えびの市役所田遺跡(3D画像)(4,000年前)

えびの市役所田遺跡(3D画像)(4,000年前)