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土器混和材の世界

土器混和材の世界

土器混和材の世界

土器を作る際に、植物の体の一部やそこから抽出した繊維などを混入することは、福井洞穴の土器にみられるように、縄文土器がつくり始められた縄文時代草創期にはすでに始まっていた。これは土器の強度を増したり、土器を軽くしたりする効果などが期待できる。東北北部~北海道南部の円筒土器文化では、植物繊維を混入した土器が多量に製作される。このような行為は恒常的ではないが、各地である特定の時期に見受けられる現象である。

北海道日高地方を中心とした縄文時代前期の土器には拠った糸(紐)が入れられた土器が発見されており、結び目も確認できることから、網を入れたのではないかと推定されている。X線CTスキャナーでこれらを抽出して取り出すと、撚糸とその結び目をより立体的に観察できる。

また、中国では、野生イネの利用が始まる約10,000年前には、イネ籾を混入する土器が登場しており、長い間このような所作が継続的に行われていた。同様の痕跡は、弥生時代の始まりの頃の遺跡の土器にも確認できる。しかし、これらにはアワやシソなども混じっており、中国のイネ籾入り土器と同じ意図で行われたのかは不明である。このような土器作りに利用される穀物加工の副産物の存在は、ある意味、農耕文化の浸透を意味する可能性があり、今後追求されるべき課題でもある。

佐世保市福井洞穴:植物遺体入り土器(3D画像)(15,000年前)

志布志市小迫遺跡:各種種実入り土器(3D画像)(2,700年前)

都城市黒土遺跡:各種種実入り土器(3D・SEM画像)(2,500年前)

粕屋町内橋坪見遺跡:イネ籾入り土器(3D画像)(2,000年前)

熊本市江津湖遺跡第9次調査:イネ籾入り土器(3D画像)(2,500年前)

佐世保市福井洞穴:植物遺体入り土器1(15,000年前)

佐世保市福井洞穴:植物遺体入り土器2(15,000年前)

熊本市江津湖遺跡第9次調査:イネ籾入り土器(2,500年前)「イネ籾を探して見よう!」

さまざまな種を入れた土器:志布志市小迫遺跡(2,700年前)

さまざまな種を入れた土器:都城市黒土遺跡(2,500年前)