縄文人の家に棲んだゴキブリ
ゴキブリに代表される縄文時代の家屋害虫は、縄文人たちがイエを作ることで、森や草原から侵入してきたムシたちである。彼らはそれぞれの食性や生態に合わせ、ヒトと一緒に共生した。その代表格が皆さんがお嫌いなゴキブリである。
現代日本には50種余りのゴキブリが生息しており、このうち家の中に浸入・生息している「イエゴキブリ」は約10種ほどである。ただし、そのほとんどは外来種であり、東日本に主に生息するヤマトゴキブリだけが日本在来種といわれている。
このゴキブリの卵が縄文土器の表面に圧痕として5か所の遺跡から発見されている。このゴキブリの卵を詳しく調べると南九州の縄文遺跡から発見された卵圧痕はクロゴキブリであり、山梨県のものはヤマトゴキブリであった。これまでの昆虫学の研究によると、クロゴキブリは江戸時代に中国南部から伝来した外来種であると言われてきたが、私たちの研究によって、クロゴキブリは日本在来種であり、西日本のクロゴキブリ、東日本のヤマトゴキブリという現代日本の主要ゴキブリの分布が縄文時代の前期~中期(5000年前)には成立していたことが明らかになった。
各地から発見されたゴキブリ卵鞘圧痕
宮崎市本野原遺跡:ゴキブリ卵鞘圧痕レプリカ(SEM画像)(4,000年前)
えびの市上田代遺跡:ゴキブリ卵鞘圧痕レプリカ(SEM画像)(4,800年前)
鹿屋市小牧遺跡:ゴキブリ卵鞘圧痕レプリカ(SEM画像)(4,300年前)
北杜市堰口遺跡:ゴキブリ卵鞘圧痕レプリカ(SEM画像)(5,300年前)
宮崎市本野原遺跡:ゴキブリ卵鞘圧痕のある土器(4,000年前)
クロゴキブリの卵鞘イラスト
ヤマトゴキブリの卵鞘イラスト
クロゴキブリ卵鞘のSEM画像