English

害虫の発生:海を渡った害虫:コクゾウムシの世界

害虫の発生:海を渡った害虫:コクゾウムシの世界

害虫の発生:海を渡った害虫:コクゾウムシの世界

① 日々増加するコクゾウムシ圧痕

2005年縄文土器の中から現代のイネの害虫であるコクゾウムシの圧痕が発見された。それ以来、縄文土器を調べるとコクゾウムシの圧痕がいたるところで発見されるようになった。現在では縄文時代のものに限っても、南は徳之島、北は北海道渡島半島まで約60遺跡、800点のコクゾウムシが発見されている。これは圧痕として発見されるムシの9割以上を占めるという異様な状況である。

コクゾウムシ出土遺跡分布図

② イネを食べなかった縄文コクゾウムシ

縄文時代のコクゾウムシはイネを食べたのではなく、縄文人たちが蓄えたドングリやクリを加害したと考えられる。その理由は、コクゾウムシは種子の中で育つため、種子のサイズの影響を受ける。縄文コクゾウムシはイネで育てたコクゾウムシに比べて1.2倍ほど体の大きさが大きい。

クリを食べるコクゾウムシ

イネを食べるコクゾウムシ

③ 縄文人が拡散させた害虫(海峡を越えたコクゾウムシ)

北海道の渡島半島先端部の館崎遺跡でもコクゾウムシ圧痕が発見された。その大きさは西日本のコクゾウムシより約2割大きく、その加害対象がクリであったことを示している。クリは本来北海道には自生しておらず、三内丸山遺跡に代表される東北地方の円筒土器文化の遺跡を営んだ人たちが運びこんだと考えられている。館崎遺跡のコクゾウムシ圧痕は東北地方から運ばれたクリの実に潜んで津軽海峡を渡ったコクゾウムシたちの痕跡である。

現代のコクゾウムシ

北海道館崎遺跡:コクゾウムシ多量混入土器(3D画像)(3,800年前)

クリの中に隠れて海を渡ったコクゾウムシ(3D画像)