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土器は縄文人のメッセンジャー

①土器圧痕とは

土器圧痕とは、土器製作時に土器粘土中に偶然もしくは意図的に入ったタネやムシの痕跡のことである。土器の成形中に粘土に外部から押し当てられた「圧痕」もあるが、そのほとんどは、粘土中に紛れたタネやムシが偶然に土器表面に現れたものである。よって、土器器壁内部には外からは見えないタネやムシが潜んでいる。そのタネやムシの種類からみて、土器は家の中で作られたものと考えられる。タネは貯蔵食料や食材ゴミ、ムシは家屋害虫などが主体を占めている。

土器圧痕の成因とレプリカ法

②土器圧痕で出てくるもの

栽培植物と家屋害虫が主である

穀物とマメ類

アズキ

アワ

イネ

キビ

ダイズ

ヒエ

果実

ウルシ

キイチゴ

害虫

クモ

コクゾウムシ

ハエ

③X線が見せる新たな世界:見えないものを取り出す

TSK 484-132

TSK 484-133-2

TSK 484-135

④土器を掘る:22世紀の考古学

2020年末から開始した文部科学省学術変革領域研究(A)「土器を掘る」は考古学、年代学、化学、昆虫学、植物学、動物学、農学、薬学などのあらゆる分野の研究者の参画を得て、土器からさまざまな歴史情報を抽出しようという試みである。遺跡発掘の年次的減少に伴い、新たな研究素材として全国の博物館や埋蔵文化財センターの収蔵庫に眠る土器に着目し、それらを総合的に研究するまさに「22世紀の考古資料学」を確立しようというものである。

土器を掘るホームページ

分析(結論)

私たちは、これまで考古学者が注目していた遺跡土壌の中に含まれる種子や昆虫ではなく、土器粘土に練り込まれた種子や昆虫を中心に研究を行なっています。
つまり、私たちの研究は文字通り「土器を掘る」ことです。その研究に用いたツールであるX線CTスキャニングは最新の科学技術であり、得られた画像をAIで解析することも行っています。
遺跡の発掘調査は年々減少傾向にあります。しかし、これらの遺跡で以前に発掘された大量の土器が保管されています。我々は、土器に関する多種多様な科学的技術を効果的に活用し、これらの土器を新たな研究資材として活用する新しい22世紀型の考古学を創設し、その新しい技術を社会に実装したいと考えています。